医療法人 さほり眼科

 

 

近鉄奈良線「若江岩田駅」近くの眼科。赤ちゃんの目の健康相談、こどもの視力低下から、大人のつかれ目、中高年の白内障、緑内障に至るまで幅広い診療を行っております。コンタクトレンズ指導・取扱い。
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2013年のひとりごと2

2013年度の日記一覧

7月1日

「既得権打破」の先にあるものは一体何なのか?

*** 信じちゃいけない「みんな」と「維新」! 混合診療全面解禁は営利企業を利するだけ! 医療の真の既得権は医師会ではなく、患者・社会的弱者にあり ***

9月1日

混合診療の全面解禁はなぜだめなのか

 

混合診療の全面解禁はなぜだめなのか

混合診療の全面解禁はなぜだめなのか

 

9月1日

<混合診療の全面解禁はなぜだめなのか>
 デフレ脱却のためのアベノミクスの3本目の矢、成長戦略に便乗して経済界からまたぞろ混合診療の全面解禁が持ち出され始めた。中には改革派を名乗り、電力・農業・医療を「既得権三兄弟」と位置付け、電力会社・農協・医師会を名指しで既得権を守ろうとする守旧派と決めつけて規制改革を前面に打ち出している日本維新の会やみんなの党のような小政党も現れ始めた。読売新聞のように一部マスコミにも混合診療の全面解禁の賛成するような論調が見られるが、本当に全面解禁されるとどういうことが起こるのかを知っておく必要がある。

 

<経済界・営利企業の思惑と戦略>
なぜ混合診療の「全面」解禁なのか。経済界・営利企業の戦略には2つの大きな柱がある。民間医療保険市場の拡大と現在は禁止されている株式会社による医療機関経営である。しかし、今の国民皆保険制度では医療費は診療報酬制度の下、公定価格で低く設定されており大した利益が上がらないことを彼らはよく知っている。そこで「医療のパイ」自体をできるだけ拡大し、自分たちで医療の価格を自由に決定でき、お金のあるところから出させる、そういうビジネスモデルに変えたいと考えている。そのシステムこそが「混合診療の全面解禁」である。

<混合診療とは何か>
 混合診療とは保険診療と自由診療の併用であり、今現在は「保険医療機関及び保険医療養担当規則(いわゆる療担規則)」の18条・19条で禁じられている(これは厚労省の省令に過ぎず、法律上の規定はないという解禁派の主張もある)。例えば国内未承認の抗がん剤を使用すると検査等も含めてすべてが自費診療になり、高額の医療負担がかかるのは理不尽であるといってがん患者などから一時、解禁の要望が上がり訴訟を起こす患者もでた。医師の中にもこれに賛成する声は少なくなかった。

<患者団体は混合診療の全面解禁には反対>
 しかし一方で、日本患者・家族団体協議会は2004年12月5日、「この混合診療の解禁は、新たな医療技術や治療法、薬などの保険適用を遅らせ、既に保険が適用されているものまで保険から外される内容である」「私たちは医療を受ける当事者として、混合診療解禁と特定療養費拡大に反対し、日本医師会や全国保険医団体連合会とも連携し、日本の優れた国民皆保険制度を守るために共に奮闘しましょう」とした「混合診療の解禁に反対する決議」を小泉首相や経済財政諮問会議などに送付している1)。
 また、「NPO法人がんと共に生きる会」は現在、「基本的には国民皆保険制度を支持している。厚生労働省および日本医師会は、科学的根拠のある薬は、承認され保険収載され、国民皆が通常の保険診療で受けられるようにするのが『王道』だと言っている。当会もその考えに全く異論はない。科学的根拠のあるがん治療薬は、いち早く承認し、保険収載することをこれまで何度も厚生労働大臣等に要請してきた」として、全面解禁ではなく、タイム・ラグが解消されるまでの「緊急避難的措置」としての部分的解禁を求めている2)。

 

<混合診療の全面解禁によって何が起こるのか>
1.新しい医療はすべて「商品」となり、ランク医療が始まる
 保険診療と自由診療の併用を可とする混合診療が全面的に解禁されると実際どうなるのか。解禁以降に登場する新しい医療はすべて自費扱いのオプション診療となり、その価格設定は医療機関の「言い値」となる。新しい医療はすべて「商品」となり、「松・竹・梅」のランク医療が始まる。つまり、レーシックや美容整形などの任意医療と同じ形態になり、患者が最善の医療を望むなら、その費用負担は膨大になる。「医療の完全商業化」が進み、一部の富裕層にとっては金さえ積めば新しい質の高い医療を優先的に腕の良い医師を選んで治療してもらうことが可能になるが、経済弱者にとっては体の負担が大きく、より効果の低い最低限の保険診療しか受けられなくなる社会になる。医療ツーリズムを積極的に推し進めているタイなどでは外国人を含めた裕福な人々が高度な医療を享受している一方で、多くの人々が非常に貧弱な国民医療を強いられており、既に現実の問題となっている。

2.いつまで経っても保険収載されない保険外診療
 患者にとって全面解禁最大のデメリットは、一旦保険外診療となった「高度な最先端の医療」は5年経ち、10年経って「一般的で標準的な医療」になったとしても永遠に保険収載されないという点にある。最先端医療・保険外診療のための民間保険ビジネスを当て込んでいる営利企業や医療費の国庫負担を増やしたくない財務省にとってメリットがなくなってしまうからである。「一度混合診療になったものを健康保険の適応にすることをしてはいけません。なぜなら私たち保険会社が保険を作れなくなるじゃないですか」これは小泉内閣で政府の総合規制改革会議の議長を務めた政商宮○氏が社内向けに発した言葉である。
 たとえ混合診療を解禁するとしてもこの「例外的」ということが非常に重要で、安全性と有効性を確認した上での「保険医療への適用が前提」になっているということが極めて肝要である。これは現在の特定療養費制度(1984年の健康保険法改正の際に新設)の拡充や簡素化などで十分対応し切れる問題である。しかし、保険収載を前提とした例外的解禁と、保険収載を前提と考えない全面解禁では全く意味が異なる。保険収載されなければ患者の医療費負担は確実に増大する。

3.その他、考えられるいくつかの懸念
 財政上の理由から軽微な疾患は保険診療から外されてしまい、保険適用が現在よりも狭められてしまうことも危惧されている。その結果、素人診断や受診抑制が起こって疾患の重篤化を招いたり、重度の疾患の発見が遅れたりする懸念が増大する。さらに、医学的に見ても新しい治療は経済的な制限のため症例数が伸びず、国民への普及も医療技術の発展も大幅に遅れることになるであろう。他にも、国が担保しない医療という面では不確かで安全とは言い切れない医療、怪しげな民間療法までもがオプション医療として広く行われてしまうはないかという懸念も指摘されている。

 

4.もし眼内レンズ手術や腹腔鏡手術などの初期に混合診療の全面解禁がされていたなら
 例えば現在は保険診療でごく一般的に行われている眼内レンズ手術や腹腔鏡手術などの医療を考えてみれば分かり易い。これらの手術も出始めの頃は技術的にも手術器械等の道具的にもまだまだ未熟で発展途上であったが徐々に進歩して、最先端の高度医療として扱われるようになった。従って当初は自費診療であったが、年数が経って安全性や有効性が確認された時点で保険収載が認められるという経過を辿ってきた。現在ではさらに自費診療と保険診療の間に、先進医療の場合には施設や術者の熟練度など一定の条件下での混合診療が例外的に認められている。
 もし、これらの手術の初期の頃に混合診療の全面解禁がなされていたならどうなっていたであろうか。これらの手術はいまだに混合診療のままであり続けていたであろう。つまり、保険外の手術費用を賄えない患者は術後に視野が極めて狭くなる分厚い眼鏡をかけねばならない水晶体摘出術や開腹手術など、旧式のQOL(生活の質)が低い手術を受けるしか仕方なく、眼内レンズや腹腔鏡手術は裕福な一部の患者のものに留まってしまい、ここまで全国に普及することはなかったであろう。

5.混合診療による保険外診療を当て込んだ保険商品は巨大ビジネスとなる
 この保険外診療の費用をカバーするための民間保険商品が積極的に売り出されるようになり、中流層以上ではこれらの民間保険に加入する人が大幅に増えるであろう。経済界、日本や米国の保険会社の第一の狙いはここにあり、国民には健康保険料の上に多額の任意保険料の負担が上乗せされることになる。それだけでは終わらない。外資も加わって民間保険市場が大幅に拡大すると、映画「シッコ」(マイケル・ムーア監督が米国の医療の実態を描いたドキュメンタリー映画)の中でも描かれていたように、受診する医療機関を指定される、入院期間が極めて短く制限されるなど診療内容に非常に厳しい制約を受けたり、あるいは告知の不備を理由に保険金の支払いが拒否されたりするなど保険会社が利益を上げるために米国で実際に起こっている様々な問題が同じように日本でも起こりうる。

6.そして株式会社による医療機関経営の解禁へ
 混合診療の全面解禁がなされれば、経済界からは次に、株式会社による医療機関経営を可能にする規制緩和要求が出てくることは確実である。もし、営利企業が医療への参入を果たせば、おそらくその資本力や経営のノウハウを活かして医療機関のチェーン展開がなされるであろう。そして、富裕層をターゲットにした超高級店型、スーパーマーケット型、居酒屋型、コンビニ型など様々なタイプの医療機関の出現が予想される。医療機関のタイプの多様化自体は患者にとっては決して悪いことではないかもしれないが、医療格差は確実に増大する。彼らはスケールメリットを最大限に活用して徹底的に無駄を省き、医師を雇い入れて支配下に置き、自分たちの意のままにコントロールするであろう。そして営利優先の意に背く医師は解雇されていくことになる。

 

<社会保障制度の本来の目的と意味>
 ここで社会保障制度の本来の目的と意味を改めて考えてみたい。歴史的に見ればそもそも社会保障制度は資本主義を進めていく中で始まった制度であり、「社会保障制度は社会主義の一部である」、「日本の医療は資本主義経済の中に残った最後の社会主義分野である」、「社会保障制度は統治者の慈悲心による貧困者・社会的弱者救済制度である」などの考え方はいずれも完全に誤った理解である。確かに保険給付など社会保障制度の直接の対象者は怪我人、病人、障害者、引退者などの社会的弱者ではあるが、真の受益者は実は統治者たる政府であり、また中流以上の階層なのである。なぜなら、社会保障制度の本来の目的は、貧困層が極左や極右の勢力に取り込まれて暴力に走ったり、カルト宗教に入信したり、飢えや疫病が蔓延したりすることなどで社会全体が不安定になることを防ぎ、社会の安定性を保つということにあるからである。つまり、社会保障制度は元来、為政者や富裕層が安心して活動できるように自分たちが社会防衛のために作った制度なのである。

<混合診療全面解禁の問題の本質は何か>
 混合診療全面解禁の問題の本質は、「今までの日本の医療に対する政治理念・政治哲学を守っていくのか、あるいは変えるのか」という点に帰結されると考える。これまでの日本の医療は国民皆保険制度が見事に機能し、日本国民は格安で非常に良質な医療を享受してきた。社会主義国もうらやむほどのコストパフォーマンスぶりであるが、それは国が医療を診療報酬制度という公定価格で縛っているからこそなせる業である。

<本当は医療側にとっては有利なはずの混合診療の全面解禁>
 しかし医療側はこの制度に決して満足しているわけではない。なぜなら、より良い医療を行おうとして高額の検査機器や手術の機械を導入しようとも検査料や手術料は低く設定され、また、いくらベテランの医師で技術を持っていようが専門医資格があろうが新米の研修医と診療報酬上の差がないなど、むしろ不満たらたらである。もし混合診療が全面解禁されれば、逆に医師は経済的にも時間的にも余裕を作りやすくなるので、本来なら医師会・医療界はもっと積極的に解禁に賛成してもおかしくないはずである。
 解禁により自由診療部分が増えて開業医の世界に競争が起こって腕の無い医師には都合が悪いとか、開業医の市場が奪われると被害妄想になっているとか言う人がいるが、果たして本当にそれが真の反対理由なのか。確かに医師間の収入格差はより拡大するであろうが、保険外診療の拡大により医療のパイ自体が拡大するので、その分、より裕福な医師が増えるだけで他はさほど変わらない。医師会を利権の巣窟ように言う人がいるが、混合診療を全面解禁した方が逆に医師の利権は大幅に拡大する。また、今の日本では費用をかけずとも自由に医者選べる、いわゆる「フリーアクセス」が認められており、現状でも競争原理、市場原理は十分に働いていて医療機関の間の競争は既に存在する。

 

<共同体主義と新自由主義>
 ではなぜ賛成しないのか。それは医療に対する政治理念・政治哲学が大きく異なるからである。大半の医師は「医療は公共財である」と考えている。特に意識はしていなくても「医療は限られた社会共通の資源であり、共同体の中で皆が大切に守り、分かち合い、譲り合い、本当に必要な人にこそ優先して使われるべきもの」という共同体主義の理念の下で診療を行っているのが現状である。
 これに対して、経済最優先の解禁派は、「医療も他の私的サービス業と同じ商業だ」という考え方である。市場競争原理が働けば患者にとってはより良いサービスが得られるようになるという新自由主義の発想である。医療を一般のサービス業と同列に見るこのような風潮は近年一般患者の間にも徐々に広がっており、金を払ってるんだから「お客様」として扱えとか、救急病院のコンビニ受診とか、タクシー代わりの救急車利用とか、他人のことを全く考えずに権利意識ばかり高い利己的な患者、モンスター・ペイシェントが増えていることは新自由主義の影響と言っても過言ではない。
 この理念・哲学の違い、価値観の違いは非常に大きい。新自由主義・市場原理主義者は、自分の自由意思で保険外の最新の医療サービスを受けられないのはおかしい、これは自由や権利を制限するものでありおかしい、という。彼らの理屈でいえば、金さえ積めばどんなに医学的にその医療なり腕の良い医者を必要としている人よりも優先してその医療を受けることが可能になる。つまり個人の経済性が医学的必要性よりも優先される医療になるということだ。患者が金さえ出せば自由に自分の望む医療が受けられるという考えは一見正しいように見えるが本当にそうだろうか。

<新自由主義の大きな弊害>
 個人の権利、個人の自由、能力主義、合理性、市場競争原理といった価値観を最優先する米国流の新自由主義によって現代の日本社会はもう既にかなり蝕まれている。古来、農耕民族である日本人は、個人の働きより、個を犠牲にしても共同体の中の和を極力重視し、皆で譲り合い、助け合い、困ったときはお互い様という伝統を守ってきた。こういう共同体主義の理念は戦後日本の企業風土の中にも深く根付いており、欧米とは全く異質の家族的な会社組織、終身雇用制と会社への忠誠心、護送船団方式といわれた業界体質など、良くも悪しくも日本式会社経営が世界的に注目された時代があった。ここには、例えば出来のよくない、働きの悪い社員でも場を和ませる力があるとか、能力のない大多数の人でも終身雇用で生活の安定が保たれていることによって社会不安が起きないとか、すべてを統計や数値で測る市場競争中心の新自由主義とは相容れない日本的な価値観がある。
 1980年代後半、日本は米国にとって経済的脅威になり、日本経済が強くなった理由が徹底的に研究された。その結果、「日本は公正な市場競争のルールを守っていないからだ」という結論が導かれ、米国の新自由主義的要求、いわゆる外圧が始まる。高度成長の時代が終わり、バブル時代の手前頃から先の米国流個人主義・新自由主義がどんどん日本に入り込んで浸食し始め、ここにきて様々な社会の歪みが噴出している。それが勝ち組・負け組と言われる格差社会の拡大、ワーキングプア、ヘッジファンドによるマネーゲームや振り込め詐欺の横行などに見られる拝金主義の蔓延、社会不安を反映した学校や社内でのいじめの問題などにつながっている。現在のTPP参加問題にしても、日本には米国で学んだ新自由主義を信奉し、拡大させようとする勢力がまだまだ存在する。限られた資源を共同体の中で分け合わねばならない時、行き過ぎた個人の権利や自由は制限を受けなければならない。まさに医療とはそういう分野であり、これは新自由主義に対する最後の砦と言っても過言ではない。

 

<医師はなぜ混合診療の全面解禁を嫌がるのか>
 医師を志した者にとって、より苦しんでいる患者、医学的に見て必要度が高い患者を優先して治療をするというのは至極当然のことである。そういう医師が、経済最優先、企業の利益を最優先にする企業経営者の理念に違和感、嫌悪感を覚えるのは極めて自然である。すべての医師が共同体主義の理念をしっかりと認識しているわけではないかもしれないが、ほとんどの医師の底流にある医師としての性、倫理感、正義、そういったものから無意識的、本能的に彼らに反発を覚えるのだと思う。既得権である保険診療を守りたいためだとか、弱者をだしにしているとか、被害妄想だとか言って医師を中傷するのなら、営利企業の経営者連中こそ、患者をだしに使ってビジネスチャンスを広げ、医療までも儲け口にしたいのか、と声を大にして反論したい。
 医師が本当に憂慮し恐れていることは、医療の現場を知らない、医療の倫理観を持たない、利潤の追求を第一に考える営利企業の経営者が上に立って医療現場を支配し、干渉すること、それによって医師の倫理を貫いた本来の診療ができなくなること、医療の世界がこういう営利企業の経営者たちに牛耳られてしまうことなのである。
<混合診療解禁派の主張とそれに対する反論>
 これまでになされてきた混合診療解禁派の主な主張(◆で表示)を抜粋し、それに対する反論(◎で表示)を加えてみた。

◆「最先端医療だけは実費で受けさせてほしいという人の方が多いはずだ。混合診療を解禁するということは患者の選択肢を増やすということだ」(松井証券松井道夫社長)3)
◆「混合診療が解禁されれば、患者がこれまで全額自己負担しなければならなかった高額な高度・先端的医療が、一定の公的保険による手当ての下で受けられるようになるため、金持ち優遇どころか、むしろ逆に、受診機会の裾野を拡大し、国民間の所得格差に基づく不公平感は是正される」(規制改革推進会議)4)
↓↓↓
◎ 短期的に見れば全額自費診療より混合診療の方が良いに決まっている。しかし問題は長期的に考えた場合である。混合診療が全面解禁されれば一旦保険外診療になった医療は永遠に保険収載されず、選択肢が増えるのは一部の裕福な患者だけであり、それ以外の大多数の患者にとってはすべて負担増となり、選択肢はより少なくなる。後者は、小泉政権下で混合診療解禁を求める規制改革・民間開放推進会議の中間とりまとめ本文からの引用であるが、この事務局に「セコム、第一生命、三井住友海上、東京海上火災など保険会社」が名を連ねていること、宮内議長が会長を務めるオリックスが医療のあらゆる分野に進出していることを見ればこれらの発言がいかに「我田引水」的なものであるかは一目瞭然である。彼らにとって患者のことなど二の次、三の次に過ぎない。

 

◆「国民が負担能力に関係なく適切な医療を受けられる社会保障として必要十分な医療は保険診療として従来どおり確保しつつ、いわゆる混合診療を解禁することは十分可能であり、混合診療の解禁が国民皆保険制度の崩壊につながるとの批判は的外れである」(規制改革推進会議)5)
↓↓↓
◎ 短期的には「社会保障として必要十分な医療」であっても5年、10年先はどうなのか。「新しい医療」は「標準的」になっても混合診療の対象のままであり、富裕層以外は5年前、10年前の旧式で不十分な医療しか受けられなくなる。これを「国民皆保険制度は維持されている」と言うのだろうか。実質的な国民皆保険制度は崩壊すると言っても過言ではない。

◆「特定療養費制度における高度先進医療の承認手続きの簡素化は極めて不十分であり、その抜本的見直し(審議の迅速化、透明性の確保、利用者志向への転換等)が行われない限り是認し難い」(規制改革推進会議)4)
◆「現行の特定療養費制度による対応で十分とする見解があるが、同制度の下で医療技術及び医療機関ごとに個別に承認し、保険診療と併用した場合にその基礎的部分(初・再診料、入院医療等)に保険給付する方法では、手続も煩瑣で時間がかかり、患者の多様なニーズへの迅速な対応や医療現場の創意工夫、医療技術の向上を促すには不十分である」(規制改革推進会議)5)
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◎ 彼らが特定療養費の拡大で不十分とするのは、自費料金の目安の提示や、取り扱い医療機関の限定など厚労省の監督下の解禁では、民間医療保険の商品開発に制約がかかることや、その他の事業がやりにくくなるからである。保険収載を前提とした特定療養費制度は現在でも十分機能しているが、さらに保険収載までの期間を短縮することが望まれる。

◆「医師会は『混合診療を認めたら、金のある人だけが高度医療を受けられるようになって格差が広がる』と主張しているが、そんなことはありえない。必要な高度医療の多くは保険でカバーされており、自由診療で受けるのは海外で開発されたばかりの技術など特殊なものに限られる。自分の意思で保険外のサービスを受けることを禁止する理由はない」(池田信夫氏)6)
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◎ 全面解禁されれば、「海外で開発されたばかりの技術など特殊なもの」はいくら年数が経って一般的、標準的な医療になっても永遠に自費診療のままであり、一部の富裕層以外の患者にとってはお金がなければ受けられない「高嶺の花」の医療であり続ける。

 

◆「混合診療で高度医療が認められると、開業医の市場が奪われることを恐れたためだった。しかし開業医のほとんどは保険外の高度医療なんかできないのだから、混合診療を解禁しても彼らのビジネスに影響はない。農産物の関税と同じで、影響のない規制改革を恐れる被害妄想なのだ」(池田信夫氏)6)
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◎ 全くの的外れである。今でも多焦点眼内レンズ手術や内視鏡手術など、新しい高度な医療を開業医レベルで行っているところなどいくらでもある。金儲けだけを考えるなら、混合診療を解禁した方がよほど医師にとって有利である。しかし、我々医師は、医療を商品とみなして一般のサービス産業と同列に扱い、医師の倫理観を持たぬ営利第一主義の企業経営者によって医療が支配され、医師としての本分が果たせなくなることを最も恐れているのだ。そもそも医療を単なるビジネスとしか捉えることのできない想像力の無さには恐れ入る。

◆「自由診療を受ける患者の負担が減り、新しい技術にチャレンジする総合病院が増えるだろう。
自由診療が増えると、社会主義でやってきた開業医の世界に競争が起こる、と彼らは恐れている。しかし『われわれの既得権である保険診療を守れ』とはいえないので、『格差が拡大する』などと弱者をだしに使っている」(池田信夫氏)6)
↓↓↓
◎ 患者をだしに使っているのは全面解禁派の方である。全面解禁は一部の富裕層患者にしかメリットがない。ネット全盛の昨今、医療に対する情報は非常に豊富で、患者の目は十分肥えており、フリーアクセスで医療機関を選べる自由がある今のシステムにおいて、開業医の世界の競争は今でも十分にある。日本の医療の政治哲学は社会主義ではなく、共同体主義というべきである。全面解禁によって医療格差は必ず拡大する。

◆「医療機関の株式会社経営の参入を懸念する声もある。しかし、医療機関を株式会社が経営しても何の問題もない。組織運営の仕方を言っているだけであって、金融機関のように株式会社であっても、規制をかけて公共的にやるよう求めることはできる。そもそも戦前の病院は株式会社で経営されていた」(高橋洋一嘉悦大教授)7)
↓↓↓
◎ 今現在ある戦前からの企業立病院は社員の福利厚生を目的としたものであり、決して営利目的ではない。今、経済界が求めている株式会社による医療機関経営の目的は明らかに利潤の追求である。利潤を求めず公共的にやるように規制するというのならあえて株式会社が医療機関経営を行う意味がどこにあるというのか。公共的にやるように規制をかけるというが、そんな規制など機能するはずもない。まさしく詭弁である。

 

◆「医師会の反対は次の2点からのものにすぎない。第一は、医師にも悪人がいるということだ。混合診療が解禁されると、民間療法的なものや、効用に比して不当に高価な薬剤や療法を患者に勧め、不当な対価をせしめる医師がいないとは限らない。(中略)そういう医師が横行すれば世間の非難を受け、医師全体の信用にもかかわる。第二は、混合診療の解禁は技術・サービスで医師が競争を行わざるをえない状況を作り出す。(中略)だから、多くの医師たちは競争を回避して『医師の平等』の殻に閉じこもっていた方が快適である。『命の平等』を標榜して混合診療の解禁に反対する医師会の『錦の御旗』も裏返してみると『医師同士の平等』と書いてある」(旭リサーチセンター鈴木良男社長)8)
↓↓↓
◎ このリポートは特に全般を通して医師会に対する悪意と偏見に満ちている。営利主義の悪徳医師を「悪人」というのなら、医療に参入してくる企業経営者の方がよほど医師より悪徳の業者が多く、「悪人」率は比べ物にならないくらい高いことは社会的に見て明らかである。我々は医師間の競争を怖がっているのではない。資本や宣伝、政治力に勝る産業界・経済界に負けることを恐れているのだ。それは、営利第一の企業経営者が医師の上に立つことによって医療の現場に干渉され、病状の重い患者を最優先に治療をするというごく当たり前のことが通らなくなってしまうからである。混合診療の全面解禁は営利企業を利するだけで、長期的に見るとほとんどの患者にとってはデメリットにしかならない。

<まとめ>
 米国の新自由主義価値観の蔓延は日本の伝統的価値観を破壊して格差社会を拡大させてきた。内閣府総合規制改革会議の資料には「医療のムダの排除、透明化により、保険財政を効率化」と書かれ、混合診療解禁により保険外診療が増大する一方で保険診療を削減できる図が描かれており9)、混合診療解禁の真の目的が財政的なものであることは明らかである。混合診療が全面解禁されれば医療格差は拡大して、国民皆保険制度は事実上崩壊する。日本の社会保障制度は新自由主義に対する最後の砦であり、国民皆保険制度の崩壊により社会不安はさらに増大する。統治者たる政府や経済界、富裕層が社会保障制度・医療の世界に新自由主義・市場競争主義を持ち込んで社会の安寧を破壊することは自らの首を絞めることになるということを明確に認識すべきである。

 

[ 参考資料 ]

日本患者団体が「混合診療の解禁」反対の決議挙げる(全国保険医連合会)2004.12.5
  http://hodanren.doc-net.or.jp/news/iryounews/041216kanjya.html
2)「混合診療」解禁についての当会の考え (NPO法人がんと共に生きる会) copyright.2009
  http://www.cancer-jp.com/report/data/archive/545.html
3)日本経済新聞.混合診療の解禁、あとは政治決断 第4回インタビュー(松井証券松井道夫社長)2013.4.8
  http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0300A_V00C13A4000000/
4)中間とりまとめ(規制改革・民間開放推進会議) 2004.8.3
  http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/old/publication/2004/0803/item02.pdf
5)規制改革・民間開放の推進に関する第1次答申(規制改革・民間開放推進会議) 2004.12.24 
  http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/old/publication/2004/1224/item041224_02.pdf
6)池田信夫blog: 医師会はなぜ混合診療を嫌がるのか―ライブドアブログ(池田信夫)2011.11.9
  http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51754488.html
7)【日本の解き方】混合診療反対論の「不可解」 背後に役所や団体の既得権(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)2013.4.11
  http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130411/dms1304110710003-n1.htm
8)混合診療の解禁(鈴木良男)-旭化成 ARCリポート 2007.7
http://www.asahi-kasei.co.jp/arc/service/pdf/874.pdf#search='%E6%B7%B7%E5%90%88%E8%A8%BA%E7%99%82+%E8%A7%A3%E7%A6%81'
9)「混合診療」の解禁の意義(総合規制改革会議作成) 首相官邸
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kisei/tousin/030715/kankei/2-1.pdf