医療法人 さほり眼科

 

 

近鉄奈良線「若江岩田駅」近くの眼科。赤ちゃんの目の健康相談、こどもの視力低下から、大人のつかれ目、中高年の白内障、緑内障に至るまで幅広い診療を行っております。コンタクトレンズ指導・取扱い。
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2013年のひとりごと1

2013年度の日記一覧

7月1日

「既得権打破」の先にあるものは一体何なのか?

*** 信じちゃいけない「みんな」と「維新」! 混合診療全面解禁は営利企業を利するだけ! 医療の真の既得権は医師会ではなく、患者・社会的弱者にあり ***

9月1日

混合診療の全面解禁はなぜだめなのか

デフレ脱却のためのアベノミクスの3本目の矢、成長戦略に便乗して経済界からまたぞろ混合診療の全面解禁が持ち出され始めた。

 

「既得権打破」の先にあるものは一体何なのか?

7月1日

 

7月1日

<既得権三兄弟>
 日本維新の会やみんなの党など、「改革派」を名乗る党の人々からは「経済を成長させるにはもっと規制緩和を進めて既得権を打破しなければならない」という主張をよく耳にする。「既得権の打破」とか「聖域なき構造改革」などという言葉は一般大衆にとって、「この人は何かやってくれそう」と閉塞感を打破する期待感を抱かせ、耳触りが非常に良い。6月17日、みんなの党は7月の参議院選挙公約を発表し、電力・農業・医療を「既得権三兄弟」と位置付け、規制改革を前面に打ち出した。日本維新の会も同じだ。「日本で今最も成長が期待できる産業は電力・農業・医療の3分野だ。しかし、それぞれ電力会社・農協・医師会が既得権を守る抵抗勢力になって経済成長の障害になっている」と日本維新の会の中田宏衆議院議員や大阪市の顧問で元経産官僚の古賀茂明氏はあちこちのマスコミで公言して憚らない。

 

<医療はサービス業か?>
 米や電力ならまだしも、医療まで「商品」に見立ててしまって本当にいいの?と問いたい。まず、こういうことを主張する人々は経済専門の学者や経済官僚、その言を間に受けて医療のことを本気で深く考えているとは思えない政治家ばかりで、社会保障の専門家でこんなことを言う人は誰ひとりいない。医療も一種のサービス産業なのだから飲食業や他の商売と同じようにやればよいというのが彼らの基本的な考え方である。医療は公共財であり、金がものをいう利己的な私的サービスとは一線を画す公的サービスの性格が強い業種である。特に救急医療の場で、利己的な患者によるコンビニ受診やタクシー代わりの救急車利用などをみると、最近彼らと同じような考え方の「お客様意識」の患者がいかに多いかがよくわかる。医療には本当に必要な人を最優先であり、みんなで譲り合い分け合うという共助の精神が必要なのだが、彼らにはこういう医療の根幹ともいうべき考え方が全く欠落している。

<経済界・営利企業の思惑>
 常に営利を追求してやまない経済界や一部企業は自分たちが介入できない分野への参入を狙って政府に規制緩和を訴え続けてきた。それが電力を独占している電力会社であり、農地規制で守られている農業であったり、医師免許を持つ者しか医療機関を開設できない医療分野であったりする。彼らは現在は禁止されている株式会社による医療機関経営を行い、大きな利益を上げたいと考えている。医者だけが医療を独占しているのはおかしい、経営の素人である医者が医療経営するより自分たちの方がよほど儲ける自信があるというわけだ。しかし、ここにひとつ問題があった。今の医療は国民皆保険制度で検査・手術・薬など診療のほとんどすべての価格が国によって決められていて今のままでは大した利益が上がらないのである。だからまず、自分たちで医療の価格を決定できるシステムに変えたいと考えたのだ。そのシステムこそ「混合診療の全面解禁」なのである。

 

<混合診療とは>
 混合診療とは一体どういうものなのか? 混合診療とは保険診療と自由診療の併用であり、今は医療法で禁じられている。国内未承認の抗がん剤を使用するとすべてが自費診療になり、高額の医療負担がかかるといってがん患者などから混合診療解禁の要望が上がっているが、可能なものには今でも例外的に混合診療が認められている。この「例外的」というのが非常に重要なのであって、新しい治療や薬の場合、まず安全性と有効性を確認した上であるが必ず保険医療への適用が前提になっているということである。また実際、外国で有効であった抗がん剤で人種差のため死に至るような重篤な強い副作用が出て訴訟まで招いたという実例もあり、拙速な承認には慎重にならざるを得ない面があるのだ。しかし、経済界が「規制を外して混合診療を全面解禁し、株式会社による医療機関経営を認めるべきだ」と主張するのは決してがん患者の事を考えての規制緩和要求などであるはずはなく、彼らの頭の中にあるのはただ単に自分たちが金を稼げる領域を増やしたいということだけなのだ。

<混合診療全面解禁が生み出すもの>
 では、混合診療が全面的に解禁されると実際どうなるのか。解禁以降に登場する新しい医療はすべて自費扱いのオプション診療となり、その価格設定は医療機関の「言い値」となる。国が公的価格を決めている現状と異なり、そこで競争原理が働き、医療でも商売が成り立つというわけである。端的に言えば「金さえ出せば新しい質の高い医療を優先的に腕の良い医師を選んで治療してもらうことが可能になる社会」になるということである。裏を返せば、貧乏人は体の負担が大きく、より効果の低い最低限の保険診療しか受けられなくなるということでもある。
 混合診療が「例外的」でなくなるということは「先で保険診療に組み込まれる」という前提がなくなるということである。つまり、混合診療の全面解禁以降は保険医療の固定化が起こり、新しい医療が保険診療になる率は国の財政的な面からみても極めて低くなると考えられる。これまではある程度定着して安全性が確認された新しい医療は徐々に保険診療に組み入れられ全国民に広く普及して行ったが、混合診療が全面的に解禁されるといつまで経っても保険診療にならないため、経済的に余裕のある一部の人々の医療に留まってしまうことになる。また、医学的に見ても新しい治療は経済的な制限のため症例数が伸びず、国民への普及も医療技術の発展も大幅に遅れることになるであろう。さらに、国が担保しない医療という面では不確かで安全とは言い切れない医療、怪しげな民間療法などもオプション医療として広く行われてしまうという弊害も予測される。

 

<混合診療解禁に続くもの>
 混合診療の全面解禁が通れば先述したように、経済界の営利企業は医療への株式会社参入を推し進めてくることは必定である。つまり、医師免許など無くてもどこの誰でも病院経営ができるようなれば、高度な医療や腕の良い医者雇って目玉商品にするなどして、その経営手腕・才覚次第でいくらでも稼げるというわけだ。詰まるところ、彼らの「欲のため」の規制緩和要求なのである。彼らは医療機関を開設できるのが医師だけに限られているということが既得権益と考えているらしい。株式会社というのは営利を追求し、得た利益を株を持つ出資者に分配するのが本来の目的である。医師としての倫理観を持たない営利第一主義の経営者連中に医師が支配されている社会を想像すると空恐ろしくなる。

<医療における真の既得権を持つものは誰?>
 混合診療の解禁で最も不利益を被るのは誰か。それは国民自身であり、中でも障害者や貧困層などの社会的弱者が最も被害を受けるであろう。医師は「医療は商売だ」と割り切れるなら、医師本来の倫理観を捨てねばならないというジレンマは別として、雇われの身になっていくらでも収入を得る道はある。医療における既得権益を最も享受しているのは実は患者であり、国民自身なのだ。日本の医療は国民皆保険制度により世界中で最も低価格で最も良質なコストパフォーマンスの良い医療を受けていることをもっと国民は自覚すべきである。

<既得権打破により最も利益を売る者>
 では彼らが言う「既得権の打破」で最も得をするのは誰なのか。一部の金持ちにとっては金次第で優先的に医療が受けられるようになるので、あまりにも利己的だが得と言えば得になるであろう。しかし一番得をするのはやはり医療への参入を手ぐすね引いて待っているオ○ックス、セ○ム、ワ○ミ、楽○などの営利企業であろう。そして財務省の役人たちである。彼らにとっては国民の健康や医療なんかは二の次で知ったことではない。それよりもまず目先の利益や財政、省益が最優先の人々である。混合診療解禁によって保険診療への公的負担(税金投入)はどんどん範囲が狭められ、最新の高度な医療は自由診療となって企業の収益が増えればその分税収が増えることになる。まさに彼らにとっては一石二鳥だ。より高度で最新の医療を望む人は医療を金で買う世の中になるのだ。金さえあればいくらでも高度な最新医療が受けられますよ、金のない貧乏人は旧式の最低限の保険診療で我慢しなさい、というわけである。現在医師は、「医療法」という法律によって営利目的での医業を禁じられているのだが、果たしてこのような規制緩和が医療法に抵触しないのか甚だ疑問である。あるいはこの法規制まで取っ払ってしまうというのだろうか。

 

<既得権打破後の社会>
 彼らの言うところの「既得権打破」の後に待っているものは一体何なのか。医療への参入を果たした営利企業はおそらくその資本力や経営のノウハウを活かして医療機関のチェーン展開を行うであろう。すなわち、「病院のスーパーマーケット化」であり、「診療所の居酒屋化・コンビニ化」と言えば分かりよい。彼らはスケールメリットを最大限に活用して徹底的に無駄を省き、医師を雇い入れて自分たちの理念の下に働かせる。彼らの理念はもちろん「患者様はお客様です。対価さえ払って頂ければそれに見合う医療サービスをします」というものだから、裏を返せばお金のない「患者」、いや「お客」は相手にしない、ということである。これは、患者の貧富と関係なく必要な医療を行おうとする医師の理念とは全くかけ離れたものであり、多くの医師仲間がこのような営利企業の理念を経営者に押しつけられてジレンマに陥る姿を思い描くと本当にゾッとしてしまう。虎視眈々のブラック企業ならなおさらである。

<町のかかりつけ医が消える>
 反省すべき実例がある。大規模商業施設の店舗規模の制限などを主目的として1974年に施行された大規模小売店舗法(大店法)が規制緩和の名のもとに2000年に廃止され、新たに出店規模に関してはほぼ審査を受けない大規模小売店舗立地法(大店立地法)が立法化されて以来、近年は各地で大型資本の出店攻勢が活発化し、特に地方都市や郡部では既存の商店街がシャッター通り化するケースが増加した。商店街のシャッター街化は地元経済の縮小をもたらすだけでなく、徒歩生活圏における消費生活が困難になるという問題を生んだ。特にこれまで街の中心部の商店街で買い物をしていた高齢者にとっては、商店街の衰退により日常生活を営むことが著しく困難になった。
 これはまさしく経済を優先した規制緩和の弊害であり、同様のことが医療の世界にも起こりうる。資本力をバックにした大規模な商業的医療施設があちこちにつくられるといわゆる「町のお医者さん」は競争力を失って激減し、低所得者や動けない高齢者は行き場を失ってしまうであろう。あるいは、チェーン展開された居酒屋チェーン店方式の診療所では雇われ院長が、利益を求める絶対的経営者の方針に逆らえず、自分が行いたい誠実な医療との狭間で苦しむようなことが出てくるかもしれない。このような診療所のモデルケースは現に今も存在する。それはまさしくコンタクトレンズ販売業者が事実上チェーン展開している「コンタクトレンズ診療所」のありようそのものである。

<日本の医療の危機>
 詰まるところ、医療における既得権打破を叫ぶ政治家たちは、国民、とりわけ社会的弱者の持っている医療分野の既得権益を取り上げてそれを営利企業に売り渡そうと主張しているのである。果たして医療の世界までもがこのような「金がものをいう世界」に成り下がってよいのだろうか。我々医師にとって医療分野での「既得権の打破」とはまさに「金のために魂を売り渡すような規制改革」と同義語と思えてならないのだが、一般の人々は果たしてそのことを理解した上で彼らを支持しているのであろうか改めて問いたい。